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    純血種の犬にとって、遺伝性疾患は重大問題です。盲目の原因となる進行性の網膜萎縮や出血性疾患であるフォンヴイレプラント病などの遺伝性疾患は、時間のかかる交配試験に頼って診断してきましたが、遺伝学の進歩によって、多くの遺伝性疾患が正確に検査され治療できるようになりました。ヒトの遺伝子「地図」、すなわちヒトの遺伝子の青写真をつくるヒトゲノムプロジェクトが刺激になって、ヒトの分子遺伝学は飛躍的に進歩しました。イヌゲノムプロジェクトにおいても、規模は小さいながらも分子遺伝学的進歩がみられます。このプロジェクトでは、ほぼ週1回のペースで、イヌの遺伝子に関する新しい情報を生み出しています。良識のあるブリーダーは、犬種登録団体と同様に、遺伝性疾患のために行う遺伝子検査によってもたらされる進歩に理解を示しています。さらに、種雄に対しあらゆる検査を行い、子犬の保証をしています。飼い主は、純血種の子犬を購入する場合には、遺伝的疾患やその犬種について知っておくことが大切です。また、特殊な犬種にみられる遺伝性疾患について、ブリーダーや獣医師に尋ねるのもよいでしょう。複数の動物種で、同じ遺伝的疾患が認められる場合には、遺伝子の検査はきわめて容易となります。たとえば、フォンヴイレプラント病は、犬と人にみられる疾患です。人ではフォンヴイレプラント病の原因となるDNA配列は、すでにわかっていましたが、犬においても、スコツティッシュ・テリアでよく似た突然変異が発見されました。残念なことですが、遺伝子研究の面ではフォンヴイレプラント病を除くと、これまで研究されてきた犬の遺伝病のほとんどは、人の遺伝病と共通した遺伝的原因をもっていません。原因となる遺伝子異常のDNA配列がわからない遺伝病に関しては、遺伝マーカー(識別可能なDNAの短い分節)を用いて検査を行ってきました。犬の染色体は、それぞれ対立遺伝子と呼ばれる座が連なってできていますが、遺伝マーカーには少なくとも2つの対立遺伝子が含まれていなければなりません。犬の特定の集団においては、対立遺伝子のなかで、もっとも多い共通構成要素が95%未満である場合に、そのマーカーは“多型的"であると表現されます。この場合のマーカーは、ほぼ同じ染色体上に特定の遺伝子異常を伴っています。このマーカーが検出される場合には、遺伝子異常が存在する可能性もあります。このような検査で病気の有無について可能性を知ることはできますが、確実性はありません。 

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