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    人が医者に病状を話すとき、「徴候」ということばを用います。話すことができない犬の場合には、飼い主が獣医師に説明をすることが「徴候」に当たります。犬の病気の徴候については、人がきちんと対応する必要があるのです。獣医師は、犬の歯肉や舌が蒼白であることを診たり、腹腔壁が緊張しているのを触診したり、噂眠状態を観察します。いずれも五感による診察なので、専門的には「徴候」ではなく「臨床症状」といいます。この用語は本章のいたるところで使用されていますが、それは、この用語を使用するのが妥当であるということ以外に、犬に起こった異常を正しく診断するには観察を前提としているからです。嘔吐、下痢、咳および吸行など、獣医師が治療をする犬の異常の一部は、病気ではなく、臨床症状です。これは攻撃に対する犬の防御で、体のバランスをくずすようなことに直面したときに引き起こされます。よくある間違いは、ホメオスタシスを脅かすものと闘う場合に、生体の防御能とともに働くよりも、これを押えつけようとすることです。獣医師はどの症状が病気を意味し、どの症状が病気に対する自然防御なのかを判断しなければなりません。たとえば、嘔吐は、犬に害をもたらす可能性のあるものを胃から排除するためのもっとも有効な方法です。もともと食べあさりが好きな犬は、毒性物質を容易に口にしますが、ほかの動物に比べて簡単に嘔吐します。下痢も嘔吐と同じように、できるだけ早く腸管から毒素を取り除くために起こるものです。内容物がなくなると、腸管の刺激物は粘液で覆われ、大腸の防御反応を助けます。感染が起こっている犬は発熱し、食欲を失うことがあります。これも臨床症状で、微生物の繁殖を抑えるという防御手段です。人はこれらの症状を排除してはいけませんが、限度を超えないようにする必要があります。犬の自然治癒能力を生かすことが、賢明な医療介入です。 

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