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    犬伝染性肝炎は、現在では珍しい疾患ですが、かつてはよく犬ジステンパーと混同されていました。この疾患は、犬アデノウイルス1型(CAV−1)と呼ばれるアデノウイルスによって引き起こされます。このウイルスは世界中に存在しており、ケンネルコフの原因ウイルスのひとつであるCAV−2(以下参照)と近縁関係にあります。犬伝染性肝炎は、1歳齢未満でワクチン凄種をしていない犬に、もっともよく起こります。多くの犬は2歳齢になるまでにCAV抗体ができるため、この病気が致死的な経過をたどることはほとんどありません。このウイルスは、大同士の接触によって伝染し、扁桃腺を経てリンパ系に入り、最終的には血液に移行します。標的となるのは、肝臓、腎臓、血管内皮および眼球です。犬の抗体は、1週間以内で任務を終了しますが、その後もウイルスは眼球と腎臓に残留し、尿に排泄されます。多くの犬が感染による1日程度の発熱を経験しています。6過齢未満の子犬は急性腹痛を起こし、24時間以内にショック死することがあります。死亡までの経過があまりにも急なので、飼い主は、犬が毒殺されたのではないかと思ってしまうこともあります。週齢がさらにすすんだ犬は高熱と腹痛を示し、吐血や血性下痢を起こします。なかには、光に対して過敏になる犬もいます。回復期の犬にはよく角膜白濁がみられますが、これは“ブルーアイ’’といわれ、白濁が消えるまでに数週間を要します。
    診 断
    症状とワクチン接種をしていないという経緯に従って診断します。確定診断のために、血清学的検査(血液の液体成分の分析)またはバイオプシー(組織標本の検査)が行われることもあります。
    治 療
    犬伝染性肝炎には特定の治療法がないので、治療効果をあげるには、いかに迅速かつ効率よく、痛みとショックに対処するかということにかかっています。輸液は不可欠です。細菌の二次感染予防のために、抗生物質を使用する場合もあります。
    予 防
    CAV−1からつくられた最初のワクチンは、犬アデノウイルスに対して予防効果がありましたが、たびたびブルーアイを引き起こすことがありました。現在製造されているワクチンは、すべてCAV−2を変異させた生ワクチンとなっています。このワクチンは、犬伝染性肝炎ウイルスとケンネルコフのいずれに対しても、ブルーアイを起こすことなく防御効果を示しています。このウイルスは、一般の家庭洗剤やヨード液または塩素系漂白剤を、水で32倍に薄めたもので不活化されます。
     

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